a short short story.
芍薬  .
「花を手向けようかと思ったの」

芍薬の茎を花鋏で勢いよく切っていく。ザクザクと音を立てるそれは優雅とは程遠い。
まるで自分がその鋏で切られているような錯覚さえ起きる。

「手向けの花にしては、豪奢すぎやしないかい?」

真っ黒い、漆塗りの花瓶に生けるべく、丈を整えられた花は三輪。
花弁の重みで、花瓶が倒れてしまうんじゃないかと思う。

「これくらい派手なのがいいのよ。手鞠咲きって言うんですって」

内側の花弁が丸く玉のように立ち上がっている。
色は真白だが、華やかな趣がある。

「ほら、綺麗でしょう?」

「そうだね」

花瓶に活けられたそれは、
透き通るほど白い肌をして、細い身体を黒い服で包んでいた彼女にそっくりだった。